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シャント発声法の現状
シャントクラス指導員 谷亀 理

昨年から今年にかけて、本会でもシャント発声法に変えた方が増えました。
シャント発声法と言うのは、喉頭摘出手術によって分離した食道と気管を、 ボイスプロテーゼという特殊な管(プロヴォックスR)で繋ぎ、人工鼻(HME)を指で抑えることによって、 吐き出す息をその管を通って食道に送り込み、食道壁を振動させ音声とするものです。
日本国内での普及はまだ喉頭摘出者の10〜15%程度ですが、ヨーロッパ等では多く取り入れられ、 スウェーデンやオランダでは患者の90%がシャント発声法で第二の声を取り戻していると言われています。

シャント発声法は、次のような特徴があり、QOLを著しく向上させるものです。
 @吐く息を使うので、空気量が圧倒的に多く、健常者に近い会話が可能
 A声に強弱、高低、抑揚が付けやすく、
感情を込めた会話や大声が可能
 B食道発声に比べ習得が容易で、シャント設置者の90%以上が短期に習得
 C人工鼻には防塵、保温、保湿の効果があり、衛生面、健康保持面で優れる
などの利点がありますが、次のような課題もあります。
 @ボイスプロテーゼ(プロヴォックスR)設置のための手術が必要
 A数カ月ごとに病院でのボイスプロテーゼの交換が必要
 B気管孔に装着する人工鼻を毎日交換
 C日に数回、専用ブラシでのボイスプロテーゼの清掃が必要

国内での普及が遅れている理由として、第一にシャント手術を行う病院が少ないことが挙げられます。
全国でも約130か所、神奈川県では6〜7か所に限られています。
第二に毎日交換する人工鼻などの経費がばかにならないことです。
市町村によってはこれらメンテナンスに必要なものを障害者日常生活用具として認定しています(公費で9割負担)が、 市町村による扱いがバラバラの状況です。
最後に私見ですが、シャント発声法を使う人が増えれば、用具等の価格も下がることが期待できます。 そのためには、国は頭頸部外科や耳鼻咽喉科医師の研修機会を増やして、シャント手術ができる医師を増やすことが急務だと考えています。
また、これにかかわる障害者日常生活用具の認定を自治体任せにするのではなく、全国一律に認定すべきだと思います。 なお、手術が可能な病院、日常生活用具の認定の有無、実際の経費など何でも事務局又は指導員までお問い合わせください。


神奈川銀鈴会の会報第46号(令和元年9月)から掲載しました